2007年 04月 15日
今日の稽古は、年に一度あるかないかの稀有なものでした。 裏千家ご宗家には午前8時半に着いたのですが、出席者は2名のみ。 淡交会の地区大会が近県で開催され、皆そちらへ行ったようでした。組織の一員であれば参加するほうが真っ当でしょう。でも稽古のために指導者が来られ、水屋の用意もできていたのですからこの好機を有難くお受けいたしました。 指導は86歳になられる寺西名誉教授。先々代の淡々斎宗匠に心酔されその教えを受け継がれたお方です。時代の潮流には離れたところにいらっしゃいますが、確たる信念に基づいたご指導は貴重です。孤高の風格といえばいいでしょうか。 ◆ 参照 裏千家ホームページ 今日庵 茶室・茶庭 稽古場は、由緒正しい名席・抛筌斎(ほうせんさい)です。 最初に、初炭。透木(すきぎ)釜のあつかい。 香合は稽古場に新しくおりたお道具で、黄交趾の型物香合、笠牛を使わせていただきました。 「家元が出してこられたんや。即全だ。」 一面の菜の花畑のなかに寝そべって、黄色に染まった牛のようにも見えました。やさしい目をしています。 拝見のとき、香銘を当てずっぽうに申しますとそれが正解だったようです。 「坐忘斎家元のお好みで紫宝(しほう)。 薫玉堂(くんぎょくどう)でございます。」 本願寺の前にあるお香屋さんで、どちらかといいますと仏事用のような香りです。修行の香りと言い換えてもいいかもしれません。 とかく順序を忘れている私を丁寧にわかりやすく指示を与えてくださいます。 炭点前が終わり、次は東京から来られた若手の会員さんの番です。 ◆ 唐物の点前がはじまりました。 縁高にはきんとんのお菓子。 虎屋の遠桜(とおざくら)。紅白のそぼろが遠く野山のさくらを思わせるきんとん。 濃茶は私ひとり一碗を頂戴しました。練りかげんもけっこうでした。 茶銘は、雲門の昔。詰めは一保堂。 唐物茶入れの蓋について、これまで聞いたことのないご意見を伺いました。 「瓶子(へいじ)蓋は、唐物の点前には向かない。掬い蓋のほうがよい。茶杓が乗り易い。」 「へいじ蓋は盆点のように盆の上に置く茶入れの場合に使用するもの。畳の上に置く茶入れの場合は唐物でも掬い蓋がふさわしい。」 寺西先生のお話は続きました。 「唐物茶入は替え蓋がついているものがあるのは、こうした場合に使う。」 こうしたご意見は古くから伝承されたものと思われます。ただ、現在の稽古では主流となっていないようですね。でも、それはそれとして傾聴すべき貴重なお話だと私は思いました。 ◆ 行の茶杓について。 竹の止め節を入念に見ると、どのようになっているかわかるでしょうか? 節には二つの山があります。その中を割って切るのが止め節の茶杓だ、とお聞きいたしました。 稽古用のものは節がそのまま残っているものでした。これは切り方が間違っていると仰っておりました。 先生は、玄々斎と淡々斎の「止め節の茶杓」を二つ所蔵されているという実績がおありなのです。淡々斎の箱書きには、「草の真削り」と書かれているというお話でした。以前、わざわざ私たちに見せていただいた記憶がございます。 行の茶杓はこんなものだと思い込んでいるのが普通です。 でも、唐物の点前を通して、道具がどのようにして使われるようになったかを考えてみることも、大事ではないかと思いました。 混乱するから点前は一つの指導でよい、という見方もございましょう。 けれども、さまざまな指導を大きく包含するのが、裏千家茶道の特質だということではないでしょうか。 ◆ 先生のお勧めでもう一点前、お稽古を見ていただきました。 台天目、ミス続出でしたがお茶を点てて、客になられた東京人Kさんに飲んでいただきました。 私は今日のご指導を、心からありがたく感謝して受け取りました。 今日庵最長老の寺西宗二業躰。先生のますますのご健康をお祈り申し上げます。 ◇◇◇ 拙サイト 2003年UP 今日庵名誉教授の方々
by tsubakiwabisuke
| 2007-04-15 02:43
| 茶の道
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