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2006年 06月 14日
夕方、タクシー会社に電話してから、居間にいたドラにそっ~~と近づき、ヤっとばかりに洗濯ネットに入れた。ゴメンヨ。 布製のボスドンバックが運び屋の役をするのだが、車に乗ろうとした途端、ポタポタと水滴が落ちた。一瞬、雨かと思ったのは、私の無知もいいところ。あわてて空を見上げたが雨ではなかった。 ![]() そのままタクシーの座席に腰をおろし足元にボストンを置く。と見ると、なにやらシートに水がたまったいる。ドラがオシッコをしたらしい。スミマセン。運転手さんに謝った。 運転手さんは獣医科でわれわれを降ろすと、向こうの通りで待っているから用が済んだら電話で連絡するようにとケイタイのナンバーを書いたメモを渡してくれた。お金はかかってもタクシーで来てよかったと思う。 前はバスに乗ってきていたが、ドラは袋の中から遠慮会釈もなく大きい声で鳴き続けた。乗客がみないっせいにこちらを向いた。近くの席のご夫人が、「赤ちゃんですか?」と不審そうに尋ねたものだ。はずかしいたらなかった。 そんな以前のことを思い出しながら、獣医科のドアーを開けて入った。 待合室にはそれぞれ犬を連れた飼い主が2人待っていた。3歳のダックスフンド犬は若者らしく元気だったが、18才というプードル犬は片目が白内障、耳はきこえず吐く息も苦しそう。抱きかかえた飼い主は、「もう寿命でしょう。」とポツンと言った。淋しい。 診察室に、主治医がきっちり午後6時にあらわれた。ドラを診察の台上に置く。一昨日のように点滴がはじまった。ぶっきらぼうに先生は話す。 「むかしはよくブドウ糖を打ってくれといわれたものだが、あれもそれなりに効果があったね。つまり、きっかけを与えることで体の中がまわり出すんだ。ホラ、テレビでも古くなると見えなくなる。そこで、ポンと叩くと動きだす、まあそういうことがあるということですな。」 点滴の効用をわかりやすく話してくれているらしい。もったいぶった講釈をされるよりずっと気持ちがいい。点滴が済んだのでついでに言ってみた。 「先生、この間は歯石を半分しかとられてませんよ。あと半分が残ってます。」 獣医さんはちょっとアキレタ表情をしながら、こちらを見て答えた。 「イタイ目にあった上に、イヤがるだろうに。中にはあんなことをしてくれたのでこの子は食べなくなった、とか文句をいわれたりするんだよ。ん、おい、口をあけろ。」 猫の口をむりやり開けて、ピンセットでエイっと歯石を取った。これでよしっと。ドラの口の中がきれいになったわけだ。ヨダレが急になくなったのもこのおかげだった。 「先生。猫って、聞くところによるとエジプトで生まれ、水を少ししか飲まなくてもいい動物なんだそうですね。腎臓が悪くなる宿命でもあるんですか?」 「そうですな。エジプトで人間によって改良されたわけだ。好きな魚を食べる、タウリンが必要。そうかといって猫が川で魚を獲るのを見たことはないでしょうが。水を少ししか飲まなくても生きられるように作られたんです。夏には犬と違って猫は暑さに耐えられる。そのため、必然的に尿のろ過機能が衰えたのでしょうな。」 おもしろい! 私はドラを洗濯ネットに入れたまま胸に抱いて、獣医さんにお辞儀をした。 「先生。この子はこれまでも危ないところを、何度か助けていただきました。ありがとうございました。」 先生は、順番を待っている他の患者(?)の保護者たちのほうに向いて、かれらに釈明する調子でこう言ったのである。 「このひとは、別にサクラではないですよ!」 いやぁ~、今夜の治療はよかったと思う。ドラはおとなしくしてくれたし、元気そうでわきまえもあるようになった。帰宅して主人にそのときの話をそのまま伝えた。主人はふんふんと笑いながら聞いていた。 「でもねえ。ドラは、また医者に連れて行ったことが気に入らないで、しばらく家出をするんじゃないかしら。あの子ってあれでアテツケをするところがあるから。」 主人はこんなことをいった。 「猫に言ってやれよ。わたしはアテツケしてもいいが、あんたは猫だからアテツケをしちゃあイカンと。」 そんな低レベルなにんげんの会話を知ってか知らずか、ドラは廊下でひとりうずくまって休んでいたのだった。
by tsubakiwabisuke
| 2006-06-14 23:17
| ねこ
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