2005年 08月 25日

晩翠の詩 「希望」


『天地有情』より  土井晩翠


希望

沖の汐風吹きあれて
白波いたくほゆるとき、
夕月波にしづむとき、
黒暗(くらやみ)よもを襲うとき、
空のあなたにわが舟を
導く星の光あり。

ながき我世の夢さめて
むくろの土に返るとき、
心のなやみ終るとき、
罪のほだしの解くるとき、
墓のあなたに我が魂(たま)を
導く神の御声あり。

嘆き、わずらひ、くるしみの
海にいのちの舟うけて、
夢にも泣くか塵の子よ、
浮世の波の仇騒ぎ
雨風いかにあらぶとも、
忍べ、とこよの花にほふー

港入江の春告げて
流るゝ川に言葉(ことば)あり、
燃ゆる焔に思想(おもひ)あり、
空行く雲に啓示(さとし)あり、
夜半の嵐に諌誡(いさめ)あり、
人の心に希望(のぞみ)あり。



宮城沖地震に被災された住民の方々は、この晩翠の詩をどのようにご覧になるでしょうか。
明治・大正の人々に与えた感動と士気はもとよりのこと、このわたくしでさえも、元気をいただくような気がいたします。

平凡社刊『世界名詩集大成10 日本1』土井晩翠 『天地有情」から抜粋いたしました。




by tsubakiwabisuke | 2005-08-25 16:04 | 夏目漱石


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