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2006年 08月 10日

スイートホーム といえば 

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お料理も上手だったおばさま、 本文とは関係のない画像。


遠い親戚になるおばさまが85歳になってホームに入っておられると聞いた。

幼かったとき、可愛がってもらったことを思い出し、3時間汽車に乗って訪ねてきた。

公務員だったご主人は早く他界。遺族年金で楽隠居といった身分で趣味の生活を楽しまれているとばかり思っていたので、ホームに入居と知って私はお見舞いに行きたくなったのだ。

その昔、洋裁が上手で私の洋服を何枚もミシンで縫ってくださった。

家庭菜園で野菜つくりも花を育てることも手馴れたもの、新鮮なトマトや大カボチャ、花は季節ごとにみずみずしい草花を切って持って来ていただいた。

こどもごころに、やさしいおばさまとインプットされた方であった。

ホームといえば、新婚さんのスイートホームだ。けれども現代は枕詞をつけないホームが社会現象になっている。

そのホームは、郊外ではないが比較的閑静な町の、或る市中の医療法人が経営になる老人ホームなのであった。

5階建てのモダンな建物で、正面玄関を入ると靴脱ぎのところに低い椅子が4つおかれている。足腰の弱いものへの配慮だろう。最初から私は好い印象を受けた。

4階へのエレベータに乗って目的の部屋に着いた。
「まあ、まあ、…」
おばさまは突然の訪問者に、かん高い声を出して歓迎をあらわされた。

一人用のキッチン、トイレ、のある板張りの奥に、長4畳くらいの部屋がありベットがおかれている。部屋には小さいホームこたつのようなテーブルと座布団。ロッカーがあるが箪笥をおくスペースはない。

実務的な会話になってしまったが、食事つきで月に約15、万円あまり支払っている。入居時は50人待ちということだったけれど、運よく入れてよかった。

「でも今では100人待ちだって、それも中々むつかしくなったそうですよ。」

入居金はおいくら?とぶしけに尋ねたら、意外な返事がかえってきた。
「それが、1円も要らなかったんです。」

それは、珍しく良心的なホームではないか!
近畿地方でなく田舎といったほうがいいような町だから、こうした金額が可能なのだろう。

おぼは、ここに来てよかったと話した。そこへひょっこりおばの一人っ子の長男さんが入ってきた。なんでも九州の自宅から来たという話だった。何十年ぶりに逢った彼は昔のままの明るい目をしていた。

大企業に勤務していたので母親とは別居、本社命令で福岡に配属され住居を建てた。定年後は子ども達が独立し夫婦だけになったが、住んでいる福岡の地が快適なので今まで通り親とは別居生活を送っているのだという。

あれだけ、手塩にかけて大事に育てられ、大学、結婚と、充分な出費をしてもらった一人息子がこれである。私も良ちゃん、と呼んで親しくしていたので思わず言ってしまった。

「もっと親の近くには住めへんの?夫婦だけならいくらでも出来そうに思えますけどな。」

良ちゃんはにこやかに応えた。
「親子関係は距離があるほうがいい場合もありますから。」

私もひとこと、つけ加えた
「近くに住んであげるだけでもいいんじゃないですか? いざとなった時に間に合いますか。」


妻にどうやら遠慮しているらしい。気の強い女性なのだろう。趣味の生活を大切にしても、たとえ仕事を持っているとしても、高齢の親を扶養する義務をないがしろにしているのではなかろうか。

日本の男性はソフトになったという。昔のように亭主関白が通せるはずもないだろうが、妻に気兼ねばかりするソフトな男も増えているようだ。

女性も口を開けば女性の権利を主張し、「家」を否定し、何かと人の非をみつけては攻撃するハネッカエリがじわじわと増加していると、憂慮する人々もある。

公序良俗、という長年つちかったものを一挙に破壊しようとするもののおそろしさを、期せずして感じさせられたのであった。






by tsubakiwabisuke | 2006-08-10 00:22 | ニュース


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